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昔、学生だった頃、何かの研究で味覚について調べた事がありました。舌で感じる味覚の研究だったと思います。舌のどの部分で苦みや甘み・酸味を感じるのかなんてことを図柄にしたりしていた記憶があります。しかし、そういう味覚以外に、美味しさを知る感覚というのは、どこからくるのでしょうか?経験値なのでしょうか?
私は幸運にもイタリアに長い期間滞在することがあったのですが、そこでの味覚は、まさしく新しい世界の冒険のようでもありました。
なにげない一本の人参が甘い事を知りました。また、ピーマンの大きさとそのとろけるような味覚にビックリし、キュウリのグロテスクで淡白なことに驚き、グリーンピースの豆をそのまま生で食べた時の美味しさを知り、見た事のないカルチョーフィ(日本語では朝鮮あざみと翻訳されています)の味に魅了され、それはそれは新しい世界の連続でした。それ以外にもワインやチーズ、生ハムやコット(生でないハム)も種類が豊富で、パンがあればそれだけで食事になりました。また、オリーブオイルを生で飲めることも知りました!
最初の頃は、かたっぱしからチーズやハムなどを試しておりました。それらはすべて添加物なしなんですね。それに比べ、日本のハムやプロセスチーズは気を付けないといけません。子供の頃、チーズだと思っていたものが、イタリアに来て似て非なるものだと知りました。
3才までに食べたものが一生涯の味覚をつくると聞いたことがあります。3才までにどんなものを食べていたのか知る由もありませんが、おそらく今よりも加工食品も少なく、自然にちかいものだったのではないかと思います。
長期のイタリア滞在で味覚も食に対する価値観も随分と変わったのだと思います。まず、化学調味料は食べれば分かるようになりました。体が受け付けなくなりました。また、加工食品も食べなくなりました。
それから、野菜の味にも敏感になりました。日本の野菜はイタリアの野菜に比べると味がありません。最近は無農薬のお野菜を食べるようになり、少し美味しさを感じるようになってきました。
日本は、世界の中でも農薬大国なのだそうで、日本の土地は農薬等で化学薬品漬けになっているそうです。これらの土壌を元に戻すのは何年も何十年もかかるそうです。やせた土地に野菜や穀物を育てるためにさらに化学肥料を投入する。悪循環です。
この現象は日本だけではないそうですが、世界でも有数の農薬大国の日本では顕著にその影響が現れます。まず、農薬による農家の方の健康被害。その農産物を食べる人にも健康被害。地球も汚染。いいことなんてあるのでしょうか?あります。農薬をつくっている化学薬品会社。(化学薬品会社さん、すみません。)
人間の体は食べるもので作られています。
そして、地球の土壌が汚染され尽くしてしまうと私達は生きては行けないのです。
「ミツバチがいなくなると人類は4年以内にいなくなる。」
とはアインシュタインの有名な言葉です。農薬や化学物質によって蜂が姿を消しています。ハチミツの価格も年々上がりつづけています。
食べるものにうるさかった父からの影響でしょうか、食べるものには敏感です。「美味しいパンを美味しいままの状態で食べたい」とつくったヘンプブレッドバスケットやバッグはそんなところからきているのかもしれません。
パンは小麦粉とイーストと水だけでつくられています、本来は。でも、日本で販売されているビニールにはいったパンはそれ以外に沢山のものが含まれています。それは日本語がわかるというよりは、化学が分かる人でしかわからない暗号のような添加物がいっぱい。
無添加のパンは日持ちはしません。その日に食べるのがベストです。
また、カリっとしたクラストの食感は美味しいパンの命です。
衛生のためなのかもしれませんが、ビニールに入れられてフニャとしたやわらかくなったパンはもう受け付けません。
オーガニックフードや地産地消を推奨するアメリカの料理家アリス・ウォータース氏は、食べ物で革命を起こそうと「美味しい革命」を実践されています。私はデザイナーとして、その考えに賛同し、美味しい革命にデザインで応援しています。いわば、「美味しいデザイン革命」といったところでしょうか?
それでは、今日はこの辺で。
皆様、よい食事を!
一生のうちに限られた食事という神聖な時をどうか楽しんでください。